東京裁判 (下) |
 | 児島 襄
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現在を凝視しない議論は「歴史学」とはいえない
やりきれない政治裁判だった東京裁判‥終局
日本人なら背を向けてはいられないのでは。
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東京裁判、すなわち極東国際軍事裁判。
昨今話題に上っている靖国神社問題もこの裁判の判決によるところである。靖国神社のことを語るならせめてこの本を読むくらいの知識は必要ではないでしょうか。テレビや新聞から得た情報のみで靖国神社を語ることがどれほど危険で無知なことかがわかるでしょう。
その東京裁判の法廷係として裁判の大半を傍聴したのが作者である冨士信夫氏だ。はっきりいって作家でもない人が書く文章なのでそれほどうまいものではないのです。淡々と事実が書き連ねてありそれはそれでいいのですが、作者の思いも所々書き記してあります。その二つの区別がなかなかつかなくてちょっと読みにくい文章だった。
まあそんなことは些細なことであります。この本では東京裁判がどのようなものだったのか、どういった形で裁判が進められていったのかが記されています。初めて知ったのが裁判期間が6ヶ月の予定が2年6ヶ月もの長丁場であったこと。(パル判事によれば6年は必要とされる裁判であったようです)そして検察と弁護人とのバトルも熱いものがあります。
弁護人は日本人だけでなく米国人もいたし、それがしっかりと正論をはっていることにも着目したい。ただ11カ国の判事では唯一パル判事のみが法の番人であった。裁判長がオーストラリア政府に呼び戻されたために一時他の判事が裁判長を務めたこともわかりました。
ここで明らかになるのは証拠としてはほとんど認められなかった日本側が提出した数々の資料。一般大衆の目には触れられることのなかった資料が数多く提出されています。
悲しむべきは被告人同士が責任逃れの弁解をするところである。どう責任をなすりつけ合っても結局は絞首刑か終身禁固刑の身ではあるのに。本当に悲しいことである。
そんななかで最後の希望として光るのがインドのパル判事の判決です。本判決とは全く異なった見方をしたパル判事の判決は被告を全員無罪としています。その文章はあまりにも長いのですが、全日本人必見の文章です。
パル判事の判決は以下の言葉で締めくくられています。
時が、熱狂と偏見をやわらげた暁には、また理性が虚偽からその仮面を剥ぎ取った暁には、その時こそ、正義の女神は秤の平衡を保ちながら、過去の賞罰の多くに、その所を変えることを要求するであろう。
涙が・・・